回転が上がらない原因究明(2021年9月)

S211へのセミトラ装着。アイドリングは順調で、走り出してもいい感じ。しかし15分くらいするとエンジンが吹けなくなる。

しばらく休んで走り出すと、ちょっとの間は順調だがすぐにまた不調に。

セミトラを短絡すると普通に走る。

なんだこの現象。よく分からない。

 

ノイズ? 2ストはノイズが多いとか聞いたことがある。ということで、勉強してみるとチョークコイルをセミトラの電源側に取り付けると良いみたい。そこで早速試してみる。

対策その1(2021年9月21日)

画面中央部のプラグの箱の中には47μHのコイルが入っている。この数値が良いのかどうか分からないがとりあえずこれで試してみる。

その結果、NG。

 

全く同じような現象が再発した。朝、仕事前にちょっと走ってみて落胆した時の写真。

あー、なんだろうこの現象。

 

で、考えてみた。実はこのラビット、ジェネレーターの発生電圧が高いのである。最大15.5Vくらいまで上昇する。ひょっとしてこれが原因? W3にセミトラユニットを取り付けたときも同じような現象が起きた。W3も回転を上げると15Vくらいまで上昇していたのだ。

 

ただW3では4000rpm以上になると、とたんにボコボコいって回転が上がらない。S211のようにしばらく走ってから現象が起きるのでは無く、起動直後から起きるのだ。

 

ノイズ?MOSFETの耐圧不良? よく分からない。W3のMOSFETに手を触れてみたら、めっちゃ熱い。こりゃだめだ。アイドリング時には全く熱くなかったのに。

ラビットS211では走り始めてから15分くらい経過してからの現象がW3では最初から発生したということ。

 

 どうしたらいいのか分からないが、とりあえずS211では効果が無かったチョークコイルをW3のセミトラにも取り付けて試走。

しかし、やっぱり効果なし。

 

そして回路を眺めながら、原因は何だろうと思案すること数日。原因と考えられる仮説を考えてみた。

 

仮説① IG1次側加圧が上昇し、MOSFETオフ時のドレイン電圧がVds(ドレイン耐圧)を上回ってアバランシェ降伏した。

仮説② Vgs(MOSFETのゲート・ソース間電圧)が上昇し、リギング(寄生振動)電圧が上昇し、MOSFETの動作が不安定となりスイッチング損失が増大した。

私のセミトラ回路では、MOSFETのゲートはツエナーダイオードで上限を16Vに抑えて保護している。ゲート電圧の耐圧はクリアできているので、ゲート電圧過上昇による故障は無いと思われるが、脈動成分は残存するので仮説②を考えてみた。

 

さて、仮説①だが、ラビットS211での現象を踏まえて検証してみる。

実はS211のセミトラではMOSFETの耐圧を650Vのものにしている。電子部品屋で在庫放出されていたことと、このMOSFETのRds(スイッチオンじのドレイン・ソース間抵抗)が数十mΩと小さいので、発熱が抑えられるためだ。よって、S211での現象発生原因としてドレイン電圧が高いため、というのは少し考えにくい。そこまでイグニッションコイルの1次側の発生電圧は高くないからだ。せいぜい200から250V程度だから。にも関わらずS211に取り付けた電源両端の電圧計が15Vを越える辺りから、ボコボコいって回転が上がらない現象が起きていた。ということは仮説②が正当なのか。

 

いろいろ考えてみたら、W3でヘッドライトをonにすればバッテリー電圧が1~2V程度落ちるので、ゲート駆動電圧が幾分抑えられる。すると現象が収まるのでは無いかと考えた。そういえばCB125JXでは全く問題なく動いているし。CB125JXは元々6V制御車で、それを発電コイルはそのままにレギュレートレクチファイヤのみ取り替えて12V化したので、そもそも発生電圧が抑制気味であり、最高でも13.5V程度。そしてセミトラ化後も全く問題なく動いている。JXではMOSFETのゲート駆動電圧が逆に適切なのかも。なるほど、ひょっとしたらバッテリー電圧=セミトラ制御回路の入力電圧の高さがMOSFETゲート駆動に影響を及ぼしていて、入力が高すぎるとMOSFETのスイッチング損失が増大するのかも。

 

ということで、W3ヘッドライトを点灯してみると、なんと順調そのもの。4000rpmを越えても普通に吹け上がる。なるほど!やはりそうか。ゲート駆動電圧が高すぎたのだ。

 

しかし! 実は、S211用のセミトラではゲート抵抗を設けたので、脈動は抑えられているはず・・・そこで改めて回路図を見てみた。

ちょっとまて、ゲート抵抗の位置がおかしいのではないだろうか。

Trがターンonしたとき、MOSFETのゲートにはバッテリー電圧からVceつまりトランジスタのエミッタコレクタ間電圧を引いた電圧が加圧されている。プルアップされているということ。本来なら、RgとR3で分圧されてゲートに加圧されるべきなのだが。だから、MOSFETのゲートへの加圧がツエナーダイオードで保護されているとは言え、高めになっていたのかな。MOSFETのゲート耐圧の範囲内とはいえ、脈動などで動作が不安定になっていたのかも。

 

そこで、本来のRgの設置位置に設けてみた。

ネットで調べてみると、Rg ×10=R3 の関係であれば良いということらしい。

R3は500Ωにしているので、Rgを50Ωくらいにしておけば良いということだ。

一応、Rgに可変抵抗を設けて、初期値を50Ωにして現車試験をしてみることにした。

対策後の試走(2021年9月28日)

蛍うさぎ。

 

セミトラユニットをブレッドボード上で作って現車でテストしてみる。

結果は、バッチグーである。いつもならボコボコいう辺りでも順調に走っている。セッティングを換えたときには、不具合は早めに出る。例えば配線回しの不適切とかで地気したり。そこで状態確認のためバイパスから外れて停車し、アイドリング回転数をどこまで下げられるかというマニアックなテストをしていたら、なんとエンジン起動不能に。セミトラを短絡すると問題なし。いろいろと部品を持参してきたが、真っ暗だし、こういうときに焦ってしまって誤配線をしでかし素子を破壊してしまってはいえないので、セミトラを短絡=セミトラ装着前の状態に戻してみるとすぐにエンジンが始動したので、そのまま帰宅。そして原因調査。

夕飯もそこそこに原因調査。こういうときに自作セミトラ試験器が役に立った。部屋で機能確認が簡単にできるので。

そして、まず疑ったのはTrとかMOSFETの破壊。なのでそれらを順次新品に取り替えてみたが現象は変わらず。でも明らかにMOSFETのゲートコントロールが出来ていないので、MOSFETのスイッチングを担うトランジスタのベース電圧をコントロールする抵抗を調査してみると、なんとこれが断線していた。

 

そんなことがあるんやな。なんで断線したのかは分からない。過電圧を与えたわけでも無いし、放熱に問題はなかったと思う。1/2wの定格にした方が良いのかな。計算上は1/4wでも全く問題ないんだが。

この抵抗を取り替えてみると、嘘のように現象が収まり、ちゃんと点火可能な状態に。へーー。

 

まあ原因が分かったのは良いけど、何故こういう金属皮膜抵抗が突然馬鹿になったのかが分からなければ同じことが起きる可能性が払拭できない。とりあえずは定格を1/2wにしておいた方が良いかな。

 

新たな不具合発見(2021年9月30日)

過去に製作したセミトラユニットにはゲート抵抗を設けていなかったので、改修しようと基板と設計図を見比べていると、なんと大きな間違いを発見。なんとトランジスタの向きを逆にしていた!要はエミッタとコレクタを逆配線していたのだ。上の図ではトランジスタの形状が分かるようにしているが、設計図ではそれをしていなかった。左図で、Eと書いているエミッターが実はコレクタ。Cがエミッタである。素子のスタイルを全く間違えていたということ。

え?これでも動作していたんだけど。まあ半導体のサンドイッチ構造だから動くのかな、と思いながらネットで調べてみたら、やはり動作するみたい。でもコレクタエミッタ間の最大電圧が大きく制限されるとか、電流増幅率が正規配線の10分の一位まで低下するとか。へー。

 

ブレッドボード上で製作したセミトラユニットではトランジスタの向きは正解だった。だから実はゲート抵抗の有無や設置場所が原因ではなく、実はトランジスタの向きが不具合の根本原因だったのではないか。MOSFETのゲート耐圧が20V、ツエナーで16Vに保護しているため、ゲートへの寄生脈動によるスイッチングロスが不具合原因と思っていたのだが。

 

さて、改修したセミトラユニットを自作エージング試験機にセットして、寝ている間ずっと600rpm相当で駆動させてみた。翌朝目が覚めた時も順調に動作していた。プラグからの火花もばっちりである。よしよし。

写真は別の2気筒用セミトラユニットのエージング試験の様子。

イグニッションコイルが熱くなるので、保冷材で冷やしている笑。バイクならフレーム等に熱を逃がしているのだが。机上でも放熱が効率的にできるような方法を考える必要があるが、とりあえずの措置だ。

プラグのマイナス側はクリップコードで回路全体のマイナスと接続しているが、ここも何か工夫したいところ。小さいエンジンのシリンダーヘッドでも入手するかな。W3のヘッドは重たくて大きくてちょっと邪魔だしなー。

他のセミトラユニットを確認(2021年10月1日)

 

 

帰宅後過去に製作したセミトラユニットを確認してみた。基板を覆うように盛っていたポリウレタン樹脂をカッターで切って取り除く。ちょっと面倒な作業を終えて、基板をあらわにしてみると・・・・やはりトランジスタが逆方向。他のユニットも、逆、逆・・・。なんと。間違った方向で覚えてしまっていたのだろう。情けない。すべて何とか改修するとともに、ゲート抵抗も試行的にいくつか数値を変えて取り付けておいた。

 

設計図もトランジスタの形が分かるように改善。今後は間違えないように対策した。

実車で試験(2021年10月2日)

試験済のセミトラユニットをラビットS211に取り付けて、ツーリングに出発。

走り始めてこれまで不具合が起きていた場所も無事通過。電圧計は15.5Vあたりをさしているが、全く問題ない。いい塩梅だ。

ツーリングはそのまま極めて順調に進み、夕方何事もなく無事帰宅。おそらくこれで大丈夫だろう。

ツーリングの様子はこちら。

 

 

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